施設概要
JA北海道厚生連帯広厚生病院は、1945年に97床の病院として開設されました。2回の移転新築と度重なる増改築・増床により、2000年には748床まで規模を拡大しています。
全国でも公的医療機関として数少ない大規模病床を持ち、十勝医療圏の完結型医療を担っていた帯広厚生病院ですが、増改築により診療機能が分断され、患者・職員の双方にとってアクセスが悪く非効率的な診療となっていることが課題となっていました。そのため、2015年度に予定していた増改築計画を全面移転新築構想へと切り替え、2013年12月、「高品質な医療」「医療人の育成」「環境への配慮」を3本の柱に据えた移転新築基本計画が作成されました。
そこから基本設計・実施設計とおよそ2年間にわたる建築工事を経て、2018年11月、651床の新たな病院が開院しました。
開院 | 平成30(2018)年11月 |
病床数 | 651床 ※ |
※北海道内の一般病床をもつ379病院のうち、上から5番目
施設の特徴
- DPC特定病院群の機能評価係数Ⅱが全国178病院中トップ(2024.2023、2018-16)
- ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)2024世界最優秀賞(医療施設)
DPC特定病院群
……DPC制度(傷病名と診療行為の組み合わせによって、一日当たりの点数が決まる制度)を導入している病院の中で、大学病院本院に準ずる診療機能を有するとして、厚生労働省に指定された病院群
機能評価係数Ⅱ
……医療機関が担うべき役割や機能に対するインセンティブを評価したもの。入院の効率性や疾患のカバー率などを係数として評価する
プロジェクト担当者の声
システム環境研究所は、2015年4月より建替え事業を支援。基本計画の見直しから開院までの一貫した支援・推進により、新病院移転整備プロジェクトを完遂しました。
このページの写真は、いずれも竣工(建物の完成)後、開院前に撮影したものを使用しています。
【運用構築/移転】担当者:加藤光貴
新病院の整備は、医療従事者も経験することが稀な一大プロジェクトであるとともに、これまでの慣習を大きく見直す機会でもあります。運用構築業務として、旧病院での患者や業務の流れを定量化・可視化した上で、運営の効率化や、将来の患者にとって望ましいと言い切れる在り方を提案しました。
移転業務としては、帯広厚生病院が地域唯一の高度医療を担っているという点や患者の特性について十分に配慮しました。診療機能や患者を移送するための段取りの検討、移転業者の選定やスケジュール管理を支援し、安全かつ効率的な引越・患者移送計画を立案しました。
提案内容を実現するために、医療スタッフや事務スタッフ、病院幹部と膝を突き合わせて意見交換を行い、事業の推進者として医療現場に向き合ってきました。新病院で生まれ変わった姿を見たときのプロジェクト達成の喜びは、病院職員さながらです。
【医療情報システム】担当者:新井千枝子
帯広厚生病院では、30を超える高度かつ多様な医療情報システムが稼働していました。新病院開院前の4年前にシステム更新(※弊社が更新を支援)を行っていたため、開院のタイミングでは、システムの移設(サーバや端末等の引っ越し、ネットワークへの接続)を行いました。これは、新システムを稼働させるよりも難易度が高い作業となります。
システム移転の成功のポイントを3つ「①旧病院から新病院への端末台数ライセンス等を含めた詳細な移設計画、②システム停止期間における十分な運用検討、③移転業者との細やかなスケジュール調整」に定めました。特に、③については、サーバ、端末等を物理的に移設するため、他の物品の移設、患者移送との時間や物理的資源(搬送のための車、エレベータ等)との優先度を整理しつつ、病院やシステム販売会社と細微に渡り調整しました。
地域の救急医療の要である病院のため、最低限のシステム停止期間で新病院でシステムが稼働した時は、本当に安堵しました。大規模病院における建替え時のシステム移設として、当社としても大変勉強になった案件です。
【医療機器】担当者:山本速生
病院内には、CTやMRIといった大きなものから生体情報モニタ等の比較的小さなものまで、多くの医療機器が存在します。十勝医療圏における最後の砦である帯広厚生病院においては、広範囲かつ高いレベルの最先端医療機器の整備が求められました。
予算計画の立案においては、全ての現有医療機器を調査し、使用部門へのヒアリングを行いました。設定されている予算額に収めるために多くの調整を行い、旧病院で購入する医療機器の検討にも関与して、無駄のない整備となるよう心がけました。
設計・施工段階では、医療機器や職員動線の効率的なレイアウト提案と作図、設置条件(大きさ・重さ・電力・給排水等)、設置機器に関する情報提供を行いました。また、開院直前まで、移転を安全に実施し、診療が可能な限り継続できるよう、綿密な計画を立てました。
医療機器の数は膨大であり、同じ機器であっても選定するメーカーによって設置条件は異なります。それぞれの医療機器は、患者やスタッフに接するものです。安全で安心して医療機器を使えるように、設計と建設工事が円滑に進むように、病院側とメーカー側の橋渡し役として徹底した支援を行いました。 病院だけでは収集しきれない他病院の整備事例や、院内の意思決定に必要なポイントを提示したこと等がとても有り難かった、とお客様から伺いました。
私にとっても設計支援から開院まで、非常に貴重な経験をさせていただいた病院です。今後も末永くお付き合いさせていただきたいと思います。
関連ページ:仕事内容、帯広厚生病院 —JA北海道厚生連(外部リンク)